A Blue Journal

自我に左右されぬ強さ

全部原価計算を考えてみる

「1個当たり、いくらなのか?」という問いは、およそメーカーで常に意識されているものだ。しかし、この「1個あたり、いくらなのか?」に合わせて1個当たりの原価を算出しても、生産現場の意思決定に使えない場合が多いように思う。

 

1個当たりの金額を算出するとき、そこに意識されるのは、それ以上で売れれば利益が出ているからだ。別に間違いではない。

(というか、それすら超えられないのは端的に言ってやばい。作らない方がいい。そういう意味で、作るか作らないかの判定には使えるかもしれない。)

 

でも、設備投資や外注・内製を考えるときなど、何らかの生産改善・改革行動を行ったときの評価指標としてはあまり使えない。

 

販売数量に応じてすぐに変わる材料費と、販売数量に応じて短期的には変わらない機械装置の減価償却費からなる、簡単な原価構造のメーカーを考えてみる。

 

・材料費は1個あたり100円かかる。

・機械装置の減価償却費は1ヶ月あたり30,000円かかる。

・生産量=販売量とする

 

ここに、1,000個生産した場合と、2,000個生産した場合を考える。

 

・1,000個作った場合の1個あたりの金額は、

 { (100 * 1,000) + 30,000 }円 ÷ 1,000個 = 130円

・2,000個作った場合の1個あたりの金額は、

   { (100 * 2,000) + 30,000 }円 ÷ 2,000個 = 115円

 

ということで、生産量が増えたことで1個当たりの固定費が減少し、1個当たり15円安くなった(万歳!)

 

なんていうのは結局、結果論にしか過ぎない。生産量が増えれば固定費が下がる、生産量が下がれば固定費が上がる。それは、需要の変動に合わせていたら原価が安くなったり高くなったりしました、という以上のなにかは見えない(僕に見えないだけで、他の人は見えるのかもしれないけど)

 

こういうのを全部原価計算というらしい。しかし、改善活動や設備投資対象を評価するには、なにも使えない。

 

・販売数量変動を吸収できる、生産能力・原価構造をどうしたら持てるのか?

・材料であれ機械装置であれ、いかに共用部分を増やして費用圧縮するのか?

・過去よりも人員や設備導入を減らした場合の効果測定は?

 

それを1個当たりに換算してしまうと、どうしても、市場需要に強い影響を受ける生産量によって規定されてしまう。生産量を独立変数とし、全部原価を従属変数とする関数を作れば、いくつかのシナリオについて、数値上は整理された、きれいな感じのするグラフやモデルは作れるだろう。

しかし、生産設備の(税務上とりあえず決められた耐用年数で算出された)減価償却費を更に市場の変動に応じて変わる生産量で割り勘したところで、設備投資がよかったか悪かったかなんて分かるはずがない。

 

しかし、この関数から分かるのは、販売数量を増やし続けたら固定費が減って良いよ!以外はわからない。精緻化しても、この障害はどうにも解決されないような気がする。

 

これを考えると、いったい原価率ってなんだろうね?ってなる。